APRSAF-31
2025年11月18日~21日
フィリピン・セブ 

APRSAF-31
2025年11月18日~21日
フィリピン・セブ 
第31回アジア・太平洋地域宇宙機関会議(APRSAF-31)がフィリピン・セブ島で開催された。
今回の会議のテーマは「宇宙エコシステムの活用を通じて地域に力を与える」とし、アジア・太平洋地域の国々にとって共通の課題である災害や気候変動に対応するため、宇宙の研究開発とイノベーションを通じて、宇宙能力を継続的に開発し経済成長を促進することを目的とした。
このテーマを受け、APRSAF-31の参加者は、地域のパートナーシップを構築し、エコシステムを発展させ、問題解決や持続可能な社会・経済発展の達成に貢献することで、地域に利益をもたらす共同宇宙活動を検討するためのプラットフォームを提供することを目的として、技術分科会活動、ワークショップ、本会議を開催した。
「持続可能な宇宙利用」、「喫緊の社会的課題の解決に向けた宇宙技術の活用」、「アジア・太平洋地域の経済発展を促進するための地域協力」の重要性を強調した「名古屋ビジョン」に基づき、政府、宇宙産業界、学生の代表が集まった。APRSAFは今後も、宇宙分野で取り組むべき課題やその対応策について、参加者が活発に意見交換できるオープンな環境を提供していく。
APRSAFは、宇宙技術を活用した社会的課題の解決と持続可能な地域開発の実現に貢献するための協力強化の重要性を再確認する。
今回の会議では、センチネルアジア・ステップ3の活動が報告され、衛星データを災害対応に活用することが地域の災害リスク軽減能力の向上に寄与することが確認された。2025年5月16日現在、センチネルアジアの参加機関数は127に達し、特に太平洋諸島の災害リスク管理局や国際機関の間で、その広範なネットワークを通じて迅速な情報共有が実現されている。
また、SAFE(環境のための宇宙利用)イニシアチブでは、水稲監視とCH4Riceプロジェクト(水田からのメタン排出と水管理の評価)の成果が紹介された。ASEAN地域における食料安全保障の強化、水田からのメタン排出に関するSAFEプロジェクトの成果のMRV(モニタリング・報告・検証)への活用、および農業における水管理モニタリングに関する地球観測衛星データとGNSS(全球測位衛星システム)の統合利用(GNSSリフレクトメトリ利用)について、産官学の代表者が議論した。また、APRSAFは、「ALOS-2アイデアソン」や「フィリピンにおけるGNSSセミナーとワークショップ」などのサイドイベントを通じて、SAWGが宇宙技術の利用における若手技術者や科学者の能力開発のための貴重なプラットフォームであることを認識した。
将来的には、成果を共有するための学術誌の特集号の発行や、炭素クレジット認証機関への働きかけなどの議論を通じて、プロジェクトの成果が実用化されることが期待される。
また、GNSS(全球測位衛星システム)の分野では、QZSS(準天頂衛星システム)やMGA(マルチGNSSアジア)の現状と取り組みが共有され、測位技術の地域利用や精度向上に向けた取り組みが紹介された。PhilSA(フィリピン宇宙庁)は、フィリピンとアジア・太平洋地域における宇宙利用の成果を報告し、地域の課題解決に向けた宇宙技術の活用事例を紹介した。APRSAFは、アジア・太平洋地域における宇宙利用の実践と協力を通じて、SDGsの達成、災害への強靭性の強化、気候変動の緩和と適応に貢献し続けることをここに宣言する。
APRSAFは、持続可能な開発と宇宙探査を支援するため、ISS「きぼう」モジュールを利用した科学実験、技術実証、人材育成の重要性を再確認する。
Kibo-ABC(「きぼう」を利用したアジア・太平洋地域協力)イニシアチブの下、「きぼう」ロボットプログラミング競技会(Kibo-RPC)やアジアントライゼロG (ATZG)などのプログラムを通じて地域協力が拡大し、Kibo-RPCには11,059人、ATZGには1,176人が参加するまでになった。Kibo-RPCは日米協力枠組み(JP-US OP3)のミッションであり、国連宇宙部(UNOOSA)の参加を通じてアジア・太平洋地域を超えて拡大し、世界的な関連性を強化している。マウスサンプルシェアと日本実験棟(JEM)からの超小型衛星放出機構(J-SSOD)を使ったこれまでのミッションの結果が報告され、国際的・学術的な観点での拡大が示された。
加盟機関や学生からの報告では、Kibo-ABCの活動だけでなく個々のSTEMチャレンジの成果が強調され、継続的な取り組みの必要性が確認された。フィリピンが主催したパネルディスカッションでは、ポストISSの時代における健康、栄養、食糧供給など、将来の有人宇宙飛行の課題について議論した。Kibo-ABCの加盟国および地域は、長期滞在ミッションへの関心の高まりと、将来の宇宙探査に向けた継続的な研究開発の必要性を反映し、レゴリス模擬土の使用を含む新たな植物実験の検討を進めることに合意した。
APRSAFは、グローバルな視野で地球規模の課題解決に貢献できる人材の育成を目指し、宇宙教育の推進と国際協力の強化に取り組むことをここに確認する。宇宙教育は、科学、技術、工学、芸術、数学(STEAM)を総合的に学ぶ機会を提供することで、次世代の創造性や課題解決能力を育成する重要な手段である。我々は、STEAM教育の各国の現状を理解し、互いに学び合い、宇宙教育プロジェクトを通じて実践的な学びの場を広げていく。
この会議では、各国の発表者が「宇宙教育を全ての人々に: 初等教育~高等教育」および「アジア太平洋地域宇宙教育会議」というセッションを通して宇宙教育の実践例の共有を行い、人材育成、宇宙教育政策、今後の宇宙教育推進について意見交換を行った。宇宙教育における多様性の尊重とインクルージョンが重要なテーマとして共有された。
また、宇宙教育プロジェクトとして、2025年7月に開催された第1回APRSAF-31 缶サット競技会の結果報告と各国での缶サット競技会の報告、および次年度の競技会に向けた議論が行われた。また、APRSAF-31ポスターコンテストの結果発表や次年度のテーマを決定した。各国で次世代に宇宙への関心を広げる取り組みが続けられていることが確認された。さらに、「若者主導の活動セッション」では、学生たちにプレゼンテーションの機会を提供し、宇宙教育活動の情報を共有し、学生たちのさらなる取り組みを促した。
我々は今後も宇宙機関、教育機関、国際機関等との連携を強化し、国際的な宇宙教育の普及と発展を目指して、次世代育成のための協力を継続する。
APRSAFは、社会課題の解決、持続可能な宇宙利用、および宇宙技術能力の向上のための情報交換の機会を提供してきた。「宇宙国際頭脳循環プログラム」と「宇宙の持続可能性における責任」という2つのセッションでは、アジア・太平洋地域の宇宙機関や大学の参加促進、産業界の新たな企業の参加など、多様な参加と協力を歓迎し、ベストプラクティスに関する意見交換や経験の共有を行った。
宇宙活動が活発化するにつれ、社会に貢献する持続可能な地域宇宙分野の実現には産学官の連携がカギとなることが認識された。「宇宙国際頭脳循環プログラム」のセッションでは、宇宙能力向上分科会(SCWG)の下、JICA(独立行政法人国際協力機構)の「宇宙国際頭脳循環プログラム」の関連セッションを行った。
「宇宙国際頭脳循環プログラム」の修了生に加え、各国の産官学から参加者を得て、地域における中核的な宇宙人材の育成などの課題や、今年8月に横浜で開催されたTICAD 9(第9回アフリカ開発会議)でのJICAのイベント紹介など実践的な事例を共有し、宇宙に関わる人材の育成等、社会課題の解決による経済発展への貢献について議論した。JICAの「宇宙国際頭脳循環プログラム」との連携セッションが、地域の人材育成や能力向上に有効であることが確認された。
「宇宙の持続可能性における責任」のセッションでは、国際的な企業活動の増加や、弾道飛行のような国境を越えた宇宙活動の拡大を見据え、宇宙活動を支えるために必要な規制や技術基準などの国際的な調和という全体テーマについて、宇宙能力向上分科会(SCWG)と宇宙法政策分科会(SPLWG)が共同で議論した。特に、宇宙へのアクセスハブとしての宇宙港への関心が高く、どの国の企業でも世界中の宇宙港をシームレスに利用できる環境整備を進めることで、宇宙活動の持続可能性を向上させることが重要との認識が示された。
このセッションでは、すでに宇宙港を開設している国や開設を計画している国からの報告や知見の共有、分科会で行った宇宙港に関する双方向の対話や問題解決に向けた議論、国ごとに異なる法律や技術基準の調和など、こうした環境を推進する上でも課題となっている相互理解が促進されたことを歓迎した。APRSAFは、地域の能力を持続的に向上させるためにはこのような協力関係が重要であると認識し、次回のAPRSAF年次総会からSCWGを再編し、宇宙持続性分科会(SSWG)を発足させることを宣言する。新しいSSWGには、持続可能な宇宙利用という世界的な課題に取り組むため、この地域における宇宙技術法と政策に関する連携やコミュニティ形成に貢献する議論や活動を推進することが期待される。
APRSAFは宇宙政策と法律の必要性を再確認し、それぞれの国や地域の制度整備の状況を目にした。APRSAFは、宇宙法制イニシアチブ(NSLI)の第3フェーズの活動の一環として、国連宇宙空間平和利用委員会(COPUOS)第68回会期に加盟国が共同で報告書を提出したことを歓迎する。APRSAFはまた、NSLIが情報共有と相互学習を通じて、国際規範に則った国内宇宙法と政策策定および実施能力のさらなる向上に貢献したことを満足感をもって表明した。こうした成果を踏まえ、APRSAFはNSLIの第4フェーズの立上げを歓迎する。
APRSAFは「アジア・太平洋地域と欧州諸国との地域間宇宙政策対話」がAPRSAF期間中に初めて開催されたことを歓迎し、APRSAFの機会を活用してこの種の試みが継続されることを期待する。
APRSAFは、月域デブリの低減及び廃棄管理 に関する問題にすべての利害関係者の協力を通じて取り組み、そのような問題に対する推奨ガイドラインを策定する必要性があることを聞き及んだ。
宇宙産業が国際的に急成長する中、APRSAFでは、宇宙産業の現状と課題、地域宇宙経済の今後の発展にどのような人材が必要か、そのような人材をどのように育成するかについて議論した。APRSAFはまた、官民協力の場を提供し、民間主導の国際宇宙経済活動を活性化させることで、アジア・太平洋地域の発展に貢献することを目指している。
第32回年次総会(APRSAF-32)は2026年10月27日から30日までタイで開催される。第33回年次総会(APRSAF-33)は2027年に福岡で開催される予定である。