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APRSAF-26

APRSAF-26

2019年11月26日~29日

日本・名古屋 Japan

成果文書

今会合では、次の25年間を見据えて今後10年間取り組む目標を掲げた『名古屋ビジョン』と、APRSAF-26の『ジョイント・ステートメント』が採択された。

APRSAF名古屋ビジョン

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APRSAFは設立以来25年間、アジア・太平洋地域の宇宙協力の自律的(voluntary)、持続的な促進を目指して、オープンなフォーラムとして発展してきました。アジア・太平洋地域の宇宙活動は今後も大きく変化していくものと考えられる中、APRSAFは次の4つの目標に取り組みます。

(1)

広範な地上課題の解決の促進

APRSAFは、衛星データを活用し、災害対応に貢献するセンチネル・アジアのイニシアチブなどを通じて、地域共通な課題の解決に取り組んできました。

この活動に加え、今後はAPRSAF-26で正式に立ち上げた農業管理等への衛星データ利用を多国間で展開するSAFE EVOLUTIONを推進するとともに、衛星データのより一層の活用を図るなど、新しい科学技術の成果を宇宙に取り込みながら、宇宙技術の更なる利用を通じて、様々な地上課題の解決やSDGsの達成に貢献していきます。

(2)

人材育成や科学技術力の向上

APRSAFは、Kibo-ABCを通じて、アジア・太平洋地域の若手研究者・技術者・青少年の人材育成に貢献してきました。また教育関係者との連携により、国際水ロケット大会を始めとする宇宙を素材とした教育プログラムや教育教材を展開し、青少年の知的好奇心を刺激するなど、教育支援を推進してきました。

これら活動に加え、地域全体の宇宙技術力の発展につなげていくための情報共有の場としての役割を担っていくとともに、革新的小型衛星・キューブサット共同開発の協力活動の具現化に向けた継続的な活動を行っていきます。また、開発援助機関等との連携により、将来各国で指導的役割を担うことが期待される高度な知見を有する人材を育成することを目指します。

(3)

地域の共通課題に対する政策実施能力の向上

近年APRSAFでは、宇宙技術と宇宙政策が、宇宙活動を推進する両輪(inseparable pairs for space related activities)であることを認識し、従来の宇宙技術者コミュニティを中心とした取組みに加え、各国における宇宙分野の政策課題と対応政策に関する情報共有の機会を提供することで、アジア太平洋地域における宇宙政策コミュニティの形成を支援してきています。

APRSAFでは、引き続き宇宙政策コミュニティの形成と発展を推進し、地域の共通課題に対する各国の政策実施能力の向上に貢献します。加えて、宇宙関連活動へ参画するプレイヤーの増加が見込まれる中、宇宙活動の長期的持続可能性及び宇宙空間の安定的な利用の確保というグローバルな課題にも、地域として貢献していきます。

(4)

地域のニュープレイヤーの参画促進と多様な連携の推進

APRSAFは、宇宙機関を中心とした場から、大学・研究機関、利用機関、国際機関・地域組織や開発援助機関等にとどまらず、産業界や世代を超えた多様なプレイヤーが参画する場として、新規技術を取り入れながら発展してきました。

APRSAFは、今後も地域の宇宙関連活動の更なる変化を取り込みながら、新たなプレイヤーの参画を歓迎し、経験を共有する場や多様な連携が生み出される場として機能することを目指します。また、これまで以上に宇宙の市場が拡大することに貢献すべく、地域内発の新たなビジネスやサービスの創出を目指します。

APRSAFは次の25年間を見据え、今後10年間、上記4つの取組みを通じ、アジア・太平洋地域の持続的な社会・経済の発展に貢献していくことを目指します。また国際宇宙探査・宇宙科学や産業界との連携など、今後地域で新たな関心となりそうな分野を取り入れ、APRSAFの取組みの対象分野を拡大しつつ、分科会の再編や新たなイニシアチブの立上げを検討し、APRSAF自身も更に発展し続けます。

以上

第26回アジア・太平洋地域宇宙機関会議 ジョイント・ステートメント

PDFバージョン

第26回アジア・太平洋地域宇宙機関会議(APRSAF)は、全体テーマ「新たな宇宙時代を拓く多様な繋がりの発展」の下、2019年11月26日~29日まで名古屋において開催された。

APRSAFは、オープンなフォーラムとして開催され、25年を経て、宇宙機関を中心とした場から、多様なプレイヤーが参画する場として発展してきた。APRSAFは、これらの多様なプレイヤーが宇宙を通して様々な連携を生む場として、また、国連などのグローバルな活動と繋がることができる場として、更に次世代へ繋げていく場として、より一層進化していくことを目指す。
また、こういった多様な連携が社会に新たな価値を生み出し、宇宙(開発利用)の新たな時代を創造していくことを期待する。

1. ニュープレイヤーの参画促進と多様な連携の推進

(1)
APRSAF25年を振り返り、この地域の宇宙活動が、衛星データ利用から、宇宙技術力の向上、宇宙環境利用、宇宙探査へと徐々に活動領域を拡大してきていることを認識した。
(2)
宇宙機関を中心とした活動から利用機関・国際機関・産業界等、多様なプレイヤーが参画する場へと発展してきたことを認識した。
(3)
持続可能な社会の構築に向けて、こうした多様なプレイヤーが連携することにより、宇宙技術利用の効果的な促進や革新的成果が生まれ得ることを認識。
(4)
今後25年間の展開を見据える中で、産業界も巻き込んだ新たな成長の在り方と、その中でAPRSAFが果たすべき役割、APRSAFに期待される役割、APRSAFで議論すべき課題(宇宙探査、宇宙デブリ、産業促進等)が確認された。

2. 宇宙空間の安定的利用に向けて

(1)
宇宙活動の高まりに伴い宇宙空間の混雑化が進む中、スペースデブリ問題への対処や宇宙空間の安定的利用及び宇宙活動の長期的持続可能性の確保が課題となっている。持続可能な宇宙開発利用の推進のため、国際的な規範(①LTSガイドライン②国連デブリ低減ガイドライン③IADCガイドライン④ISO等)の実行を確保する国内的な取組の推進や、宇宙物体登録や発射事前通報等の宇宙活動に関する信頼・透明性醸成のための措置の重要性を確認した。
(2)
宇宙空間の安定的な利用を確保するため、また、グローバル及び地域の共通課題に効果的に対応するためには、宇宙活動を巡る国内法や諸手続きについて宇宙条約をはじめとする国際規範にのっとり進展させていくことが求められる。
(3)
アジア太平洋地域における各国の宇宙活動を巡る法制の状況をとりまとめ、COPUOSにおけるグローバルなルールメーキングへの貢献を目指す宇宙政策実務家ワークショップにおける国内宇宙法制イニシアチブの立ち上げを歓迎する。COPUOS法律小委員会に対して同イニシアチブのアジア・太平洋における宇宙活動法等の国内立法状況に関する報告書を提出する予定。
(4)
宇宙空間の安定的な利用の確保のためのスペースデブリ対策に関して、宇宙技術分科会がアジア・太平洋地域の研究開発能力向上のための情報ハブとしての機能を担っていくことが確認された。
(5)
スペースデブリ除去等の実現に向け、宇宙機関が革新的な将来技術開発への挑戦を続け、宇宙技術力の向上を図っていくことが重要である。

3. リージョナルな取組みとグローバルな取組みの連携

(1)
持続可能な社会の構築に向けSDGsを共通言語として、国際機関、開発援助機関等と連携し、多国間協力体制に基づくリージョナルな課題の解決に向けた取組みを通じて、SDGs等のグローバルな地球規模課題解決に向けた取組みに貢献できることを認識した。
(2)
グローバルアジェンダ(UN SDGs、仙台フレームワーク、パリ協定)で取り上げられている自然災害、気候変動、食料安全保障、水資源管理などの社会課題の解決のために、SAFEやセンチネル・アジア等のイニシアチブ活動をより一層推進することを期待する。
(3)
特に、SAFEイニシアチブが、多国間協力による宇宙利用を推進するためのフレームワークとして、”SAFE EVOLUTION”イニシアチブに発展したことを歓迎する。データプラットフォームを通じたデータ・ツールの共有やベストプラクティスを通じた知見・事例の共有により、多国間協力の強みを最大限に生かすことを期待する。
(4)
センチネル・アジアについては、長期戦略プランの策定や参加メンバーによる共同運営がなされていることを確認し、APRSAF多国間協力の成功例として称賛する。参加メンバーの災害管理活動をより効果的に支援し、社会基盤となることを期待する。

4. 次世代との対話促進

(1)
宇宙開発には長い年月を要することを再認識し、先人の達成の上に、今があり、この先を受け継ぐ集団の確保が重要と認識する。
(2)
APRSAF-26では、全体会合のセッションとして初めて、高校生、大学生、若手技術者が登壇し、宇宙機関長と直接意見交換する場を設けた。その中で、宇宙技術を地球規模課題の解決につなげる革新的なアイディアについて、宇宙機関長と若手世代で議論した。
(3)
APRSAFには、こうした世代を超えた多様な連携を育んでいく場としての役割が、今後ますます期待される。

5. 地域の宇宙技術力の向上

(1)
地域全体の宇宙技術力の発展につなげていくための情報共有の場としての役割を担っていくとともに、革新的小型衛星・キューブサット共同開発の協力活動は、各機関の技術、リソース状況を確認し、衛星システムとして適切なミッションと開発体制を整えるなど具現化に向けた継続的な活動を行った上で、本格的に始動することが確認された。
(2)
Kibo-ABCによる多国間での人材育成ミッションの新規創出や、二国間協力ミッションへの発展など、安定した宇宙利用機会である「きぼう」がアジア・太平洋地域に浸透し、総合的な宇宙技術力の発展、継続的な宇宙環境利用につなげていくことへの期待が示された。
(3)
各国で進められている宇宙教育活動について、「次世代の教育振興」、「女子へのSTEM教育・女性の活躍推進」、「イノベーションを生む教育」、「国際協力」等、SDGsの視点を加えて議論を続けていくことが共有された。

6. 国際宇宙探査活動への参加促進

(1)
国際宇宙探査に向けた世界における計画の動向を共有し、今後の月探査計画において、持続性が鍵であるところ、産官学から多様なプレイヤーの参画を得て、推進していくことの重要性を確認した。
(2)
地上技術の活用や月探査技術の地上への還元などのDual Utilizationのアプローチや、「きぼう」を将来の宇宙探査に向けた技術実証の場としての活用、さらには小型探査機で広がる可能性等も視野に、今後、APRSAFにおいて宇宙探査に関する議論を続けていくことを確認した。
(3)
JAXAが現在議長を務めるISECGへのアジア太平洋地域の宇宙機関の参加が奨励されるとともに、将来の月の社会を考察するMoon Village Association (MVA) の取組みなども共有し、アジア太平洋地域の新たなプレイヤーの増加に向けた期待が示された。

第27回APRSAFは2020年にベトナムで、第28回APRSAFは2021年にインドネシアで開催する。

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